1990年に第70回文學界新人賞を受賞し芥川賞候補になった河林満の小説『渇水』を30年の時を経て映画化。本作は、数々の重厚なドラマを生み出してきた白石和彌がプロデュースしました。人にとって必要不可欠な水を通じて、心の渇きを感じている主人公と幼い姉妹の交流を描く人間ドラマを主演の生田斗真をはじめとして、制作にまっすぐに向き合った作品です。
今回は、そんな映画『渇水』について紹介していきます。
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作品情報
- 公開日:2023年6月2日
- 監督:髙橋正弥
- 原作:河林満『渇水』
- 脚本:及川章太郎
- 企画プロデュース:白石和彌
- 音楽:向井秀徳
- 配給:KADOKAWA
実力派俳優の生田斗真が主演、企画プロデュースは『孤狼の血』シリーズなどで監督を務めた白石和彌、監督は岩井俊二監督作品や宮藤官九郎監督作品で助監督を務めてきた髙橋正弥が担当します。
本作は、原作にアレンジを加えて制作されました。現代の社会問題と人間同士の不信による渇きを感じた物語は変わりませんが、映画のラストで姉妹が選ぶ結末には、渇いた感情を潤す希望を感じずにはいられません。
『渇水』のあらすじ
日照りが続く夏、市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、同僚の木田(磯村勇斗)と毎日のように水道料金が滞納する家庭を訪ねては、水道を停めて回っていた。困窮家庭には忌み嫌われ、妻(尾野真千子)や子どもとの関係もうまくいかず、心の渇きを感じる日々の中、岩切は育児放棄を受け、二人きりで家に取り残されている幼い姉妹に出会う。困窮家庭にとっての最後のライフラインである”水”を停めるのか、岩切は葛藤を抱えながらも規則に従い停水を執り行うがー。
『渇水』の登場人物とキャスト
生田斗真(岩切俊作)
市の水道局職員。水道料金を滞納している家庭や店舗を訪れて、料金の徴収と「停水執行」を執り行っています。家庭はうまくいっておらず、妻と息子とは別居中です。
心に渇きを感じている主人公・岩切俊作を演じるのは、俳優の生田斗真です。生田斗真は、ジャニーズ事務所所属の俳優。1996年からNHK教育テレビ『天才てれびくん』で活躍し、その後、俳優としてテレビや舞台で活動します。2007年ドラマ『花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス』でブレイクすると、2009年には映画『人間失格』で映画初出演し、主演で演技を絶賛されます。数多くの作品に出演している実力派俳優です。
小出有希(門脇麦)
恵子と久美子の母親。水道料金を延滞したまま子どもたちの育児を放棄してしまい家に帰らなくなります。
二人の姉妹の母親を演じるのは、女優の門脇麦です。門脇麦は、2011年ドラマ『美咲ナンバーワン!!』で女優デビュー。2016年には映画『太陽』で主演を務めます。その後も多くの映画で主演を務め、舞台やミュージカルでも活躍しています。代表作は、2018年映画『止められるか、俺たちを』、2023年ドラマ『リバーサルオーケストラ』などがあります。
木田拓次(磯村勇斗)
岩切俊作と同じ水道局の職員。一緒に水道料金の徴収をしています。
主人公の同僚を演じるのは、俳優の磯村勇斗です。磯村勇斗は、2014年ドラマ『事件救命医2 IMATの奇跡』で本格的にデビュー。2015年『仮面ライダーゴースト』で仮面ライダーネクロム役を演じて注目されます。2017年にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の見習いコック役で人気を獲得し、それ以降、精力的に活動の幅を広げています。
岩切和美(尾野真千子)
主人公の妻。息子と一緒に実家に帰っています。
主人公の妻・岩切和美を演じるのは、女優の尾野真千子です。尾野真千子は、1997年映画『萌の朱雀』でスクリーンデビューし、カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞しました。それ以降、映画話題作に出演し、2007年主演を務めた『殯の森』でカンヌ映画祭のグランプリに輝きました。2011年NHK連続テレビ小説『カーネーション』でヒロインを演じ、2014年『そして父になる』で第37回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、『探偵はBARにいる2』で同優秀助演女優賞を受賞しています。
小出恵子(山崎七海)
育児放棄にあい、妹と二人で生きているしっかり者の姉。
母を信じ、妹と二人で生きようとしている姉・恵子を演じるのは、子役の山崎七海です。山崎七海は、2021年映画『なぎさ』で映画初出演を果たし、東京国際映画祭にてレッドカーペットを歩く。他、出演作にはドラマ『シジュウカラ』、『生理のおじさんとその娘』、Official髭男dism『Universe』MV主演があります。
小出久美子(柚穂)
育児放棄にあい、姉と二人で生きている天真爛漫な妹。
姉とともに生きようとする明るい妹・久美子を演じるのは、子役の柚穂です。柚穂の出演作品は、2021年映画『鳩の撃退法』、『ほうきに願いを』などがあります。
『渇水』に対するネットの評判は?
『渇水』のレビュー・総評
人間にとって欠かせない水ですが、水道料金を延滞する人々には、それぞれの事情があります。そして、水道局職員として「停水執行」する側の人間にも葛藤があり、その葛藤に向き合う主人公を生田斗真が誠実に演じています。姉妹二人の演技も素晴らしく、子どもとしてできることをしている彼女たちの健気さをまっすぐに伝えています。『渇水』は、あくまでフラットに人を描いているからこそ、観る側にさまざまなことを考えさせ、伝える作品になっています。